【弁護士コラム】大阪府立学校における髪染め強要事件 指導の違法性について


2017年11月18日

学校の指導内容について

そもそも、校則にはすべて従う必要があるのでしょうか。

校則等の内容については、「事柄の性質上、校長が教育的・専門的見地からの裁量権を有するというべきであるから、その定めは、学校の設置目的を達成するのに必要な範囲を逸脱し著しく不合理である場合には、行政立法として無効になると考えられるが、そうでない限り、生徒の権利自由を束縛することとなつても、無効とはいえず、生徒はこれに従うことを義務づけられるのであつて、校則等の具体的規定が裁量権の逸脱、濫用に当たるかどうかは、校長がその規定を設けた趣旨、目的と社会通念に照らし、それが学校の設置目的との間に合理的関連性を有するかどうかによつて決せられるというべきである。」(裁判年月日 昭和63年 6月 6日 裁判所名 高知地裁 裁判区分 判決事件番号 昭59(行ウ)10号事件名 無期停学処分取消等請求事件 〔高知大方商業高校校則違反事件〕)

このような裁判例もあり、校則の内容については校長による判断が大きいといえます。

では、今回の学校の髪色の指定の校則や指導は、社会的に相当な行為なのでしょうか。

ここでは生徒さん側の事実主張である、地毛が茶髪であることや黒髪染めのために身体的なダメージを負っているとの主張が真実であるものとして、検討します。

生徒の外見に関する校則自体は一般的に認められていますが、本件のように染めたのではなく、「地毛の色が明るい」ことを理由に校則に違反する、さらには指導の対象とするということは、私は社会的に相当だとは思いません。すなわち違法、不適切な指導だと考えます。

一部報道によると、「学校側は指導の理由を、『茶髪の生徒がいると学校の評判が下がるから』」としています。しかし、本来的に身体的特徴を挙げて、「〇〇がいると学校の評判が下がる」という文脈で話しをした場合、それがおよそ差別的で、言葉の暴力に当たることは明らかです。

よく言ってはいけないといわれる言葉、いわゆる言葉の暴力の例として、「デブ、ハゲ、チビ、ノッポ」など、身体的特徴をいうことが多いです。生まれながらに、または生活の中で、個性としての身体的特徴を持つことは決して悪いことではありません。あくまで特徴をどう思うかは個人の好みの問題であって、個人の好みの問題に、人の身体的特徴のレベルから合わせろというのは、付き合わされる方にあまりにも大きな負担です。

そうした『自分という存在が世の中に受け入れてもらえない』という思いは、非常に強力な苦痛を伴います。また、身体的特徴を持つことは本来、生徒が意識的に取得するバイクの免許やバイトとは異なり、本人の意識の問題では如何ともし難いといえます。

仮に同級生を「デブだ、デブだ」と発言している子どもが、「デブと言われるのが嫌なら痩せればいい」などと言ったときに、その発言をいかに自分勝手で、失礼な発想か気づかせることにこそ、教員の指導力が試されるように思います。

本件の学校の行動は、茶髪という、先ほどの例に比べるとあまり蔑称として利用されることがないものに対し行われているために、本質が見えづらくなっているように感じます。「デブがいると学校の評判が下がる」「ハゲがいると学校の評判が下がる」として教員が生徒を指導するということは、到底許されることではありません。これと同じく、「地毛であっても)茶髪がいると学校の評判が下がる」という言葉も、到底許されないはずだと私は考えます

ちなみに、今回の生徒さんは、無理に黒髪にするために、体に不調をきたしていたといいます。学校教育において禁止される体罰には、単なる暴力以外にも、トイレに行かせないなどの『身体的苦痛を伴う指導』も含まれています。本件のような、地毛に対して黒髪染めを求める指導は、生徒さんの身体的苦痛をも生じさせることであり、体罰に当たる可能性さえあります。この点でも許されるべきではありません。

最近の学校問題

学校現場では今、本件のような生徒の違い、多様性に対する不適切な対応が多く行われています。生徒の国際化が進展しているためです。

特に、家庭と学校とで主言語が違う場合、学校では、他の生徒に無理矢理にでも合わせようとし、失敗するとその生徒を問題のある生徒として扱います。日本語という言葉についていけないことを即時に発達の問題にしてしまうのです。

日本語が母語であるかどうかにかかわらず、子どもは言葉を使うのが大人ほどうまくありません。また、学校が好きで言いたいことはあるけれど、先生に気を使って言わない子も多くいます。その子達は、例えば海外旅行で、英語は聞いて理解できるけれど話せない、といったような、コミュニケーションがうまくいかないもどかしさの中、何も言えずにただサンドバックのように言葉の暴力に耐えるしかありません。

本件について、事実関係が真実ならば、生徒さんは正にサンドバックのようになっていたのだろうと思います。そのようなつらい思いをしている生徒さんのために、少しでも早い解決を願うばかりです。

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