【弁護士コラム】アメリカンフットボールのタックルは刑事事件となるのか?(山本健太弁護士)


2018年5月21日

アメリカンフットボールのタックルは刑事事件となるのか?

今月行われたアメリカンフットボールの試合中、選手が、無防備な状態の相手方選手に後ろからタックルし、タックルされた選手が右ひざなどに大怪我を負う事件がありました。

そして、タックルを受け大怪我を負わされた選手とその御両親は、大阪府内の警察署に傷害の疑いで被害届を提出し、今月21日に、被害届が受理されたとのニュースがありました。

 

このようなスポーツ中の悪質な行為について、暴行または傷害事件として刑事事件化され、ひいては裁判がなされることはあるのでしょうか?

 

この問題について、アメリカンフットボールではなく、ボクシングの試合の場合を想像してみてください。

ボクシングの試合では、相手の選手のことを当然のように殴ります。これは、刑法の暴行罪の条文にある「暴行を加えた者」に該当すること、ひいては、刑法の傷害罪の条文にある「人の身体を傷害した者」に該当することは、みなさんも感覚的に分かると思います。

では、ボクシングの試合が行われた直後に、警察官が試合会場に来て、ボクシングの選手を逮捕しないのはなぜでしょうか?

 

実は、刑法上の罪が成立するためには、問題となる行為が、刑法の条文に該当するだけではなく、違法であることが必要なのです。

刑法35条には、「正当な業務による行為は、罰しない。」とあります。ボクシング選手が試合後に直ちに逮捕されないのは、この条文があるからなのです。

つまり、ボクシング選手は、確立されたルール、スポーツマンシップ等にのっとりスポーツを行っている以上、暴行罪または傷害罪の条文に該当する行為を行っているものの、刑法35条により、その行為は違法ではないと評価されるため、暴行罪または傷害罪として処罰を受けないのです。

このことは、アメリカンフットボールの試合でも同様です。アメリカンフットボールは、「格闘技」と例えられることがあるように、その魅力はたくましい肉体を持った選手たちが激しくぶつかり合うという、ダイナミックなプレーにあります。つまり、アメリカンフットボールの選手の行為も、当然、暴行罪または傷害罪に該当する可能性は十分にあります。しかし、選手たちは、アメリカンフットボールのルール、スポーツマンシップ等にのっとり、プレーを行っていますから、ボクシング選手のプレーと同様に、刑法35条により、違法性がなく、暴行罪または傷害罪の処罰を受けないのです。

 

ただし、この条文をよくご覧ください。この条文は、「正当な」行為に限って、「罰しない」としています。つまり、「正当な」行為でなければ、違法ではないとの評価はなされないのです。したがって、今回のアメリカンフットボールの事件についても、「正当な」行為と言えなければ、違法ではないとの評価を受けないため、暴行罪または傷害罪として刑事事件化される可能性は十分にあるのです。

 

(弁護士 山本健太)

 

 

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